併せとは作品のキャラクターが複数人数で集まっての撮影です。概ね7人以上を超えると大型併せと言われることがありますね。
コスプレ撮影のカメラマンとして活動していると必ずこの大型併せを撮影する機会があります。大型併せは「1人を撮る個撮」や「少人数を撮る併せ」とはまた違った撮影方法が求められます。そして結構大型の撮影って難しい…と避けてしまうカメラマンも多いぐらいです。
しかし大型併せは多くのレイヤーさんと交流できますし、普段撮れないようなインパクトのある写真を撮れるまたとないチャンスでもあります。
今回はそんな大型併せの撮影を失敗無くこなすために、覚えておきたい撮影テクニックをポイントを絞って解説していきましょう。
Contents
大型併せ撮影時のカメラ設定を覚えよう!
大型併せの時のカメラ設定で一番大切になるのが「絞り」(F値)です。普段の撮影では背景にボケを出すために、F値を小さくしている(開放している)人が多いと思います。
しかし大型併せの場合は、F値を大きく(絞り)します。
大型併せの写真でまず求められるのは、メンバー全員の顔にピントが合っているかどうかです。たとえ横並びでまっすぐ並んでいるように見えたとしても、顔の位置は前後しています。
この時にF値を小さくしていると、ピントが前の人に合ってしまい、後ろの人はボケてしまっているという写真になってしまいます。こうなると使えません。
具体的にはF値は6以上、不安な場合や前後に分かれる構図が多い場合は9ぐらいまで大きくすると失敗がありません。
大型併せ撮影時にはどんなレンズを使うべき?
これは広角すぎないズームレンズを使うのが一番無難です。広角レンズだと隅のメンバーが歪んでしまいます。
実際に大型併せを撮影する時は、全員並べると「ギリギリ入るか入らないか」の状況で撮影することも少なくありません。(もう少し広げると白ホリスペースから出てしまうなどの場合です…)
またスタジオによってはこれ以上後ろに下がるスペースが無かったりして、単焦点に必要な距離を取ることもできない場合も多いです。
自分の撮影位置を定めた後、微妙なピント合わせをできるズームレンズを使うのがもっともスムーズに撮影を進行できるでしょう。
十分に距離が取れて、メンバー全員を入れられるなら単焦点でも構いません。
大型併せに必要な機材は?
大型併せだから特別何か機材が必要というわけではありませんが、あると良いのは2つ以上の定常光、もしくはストロボ+ディフューザーの光源です。
特に大型併せでは構図の端にいるメンバーと中央にいるメンバー、列の前後にいるメンバーで明るさの差が起きやすいです。
なのでライトを隅や後ろの方に意識して当てて、全体の明るさを整える必要があります。
他には構図の幅を広げるために、上からの俯瞰視点での撮影が可能になる脚立や踏み台があると良いでしょう。
使って良かった大型撮影のライティング
大型の撮影では並び方によって奥行きが出たり、横幅が広くなる場合が多々あります。
なので全体を明るく照らすようなライティングが必要となります。
おすすめしたいのは、大型(150cm)以上のアンブレラです。
さらに傘の深さが深型であればなお良いです。
アンブレラを2台、ストロボと一緒にセットします。
アンブレラは反射型の白色。
置く位置はブースの左側と右側の2か所、やや中央向きに向けてセットします。
高さは180cm程度と高くして、角度は被写体に向けて斜め45度とします。
ストロボの光量ですが、大人数の場合はF値を絞りますので、どうしても露出は暗めになってしまいます。また全体に光を回したいので、やや強めにします。
スタジオ内では概ね1/8~1/16に調整することが多いです。
あとは何回か試し撮りをして、ストロボの光量を変えたり、位置を変えたり微調整をかけていくと良いでしょう。焦らずにしっかりと設定してから撮影を進めるようにしましょうね。
大型併せ撮影の失敗を防ぐ!簡単テクニック!
それでは実際に大型併せ撮影時に使えるテクニックを解説していきましょう。
しかし実際に「ストロボを~~~で反射させて××で…」なんて難しい話は抜きにして、ここでは誰でも簡単に使えるものを解説していきます。
誰でもできるちょっとの工夫で、使えない写真を量産してしまうような失敗を無くす。そんな視点からの解説です。
撮影時は必ずカウントを!
大型併せの写真でよくある失敗が「誰かが目をつぶっていること」です。構図や色合いも良いのに、メンバーの誰かが目をつぶっているせいで使えないという写真ですね。
これを防ぐには、カメラマンが撮影時にカウントをするのが一番です。
「行きます。3、2、1、」でシャッターを切る。
こうすることで全員のタイミングを合わせて、失敗の無い写真に繋がります。簡単ですが、見落とされがちなテクニックですので、ぜひ活用しましょう。
構図や設定のズレを防ぐため、レイヤーさんに確認をする!
自分では良く撮れているつもりだったのに…イメージと違うみたい。そんな使われない写真を送ってしまうのも大型撮影でよくある失敗です。
全体的に構図を整えたらまず一枚撮影。一度メンバーのレイヤーさんの方までカメラを持っていき、確認してもらうとイメージのズレの解消ができます。
- ポイントは写真を見せる際に、必ず自分がレイヤーさんの方へ持っていくこと。(相手に動いてもらうと構図がズレます。)
- またその際、指示や訂正してほしい部分を指摘されたら素直に従うことです。
特に2点目は「もうちょっと全体をここまで入れて…」「もうちょっと明るさを…」とレイヤーさんの視点で指摘されることもあるかもしれません。しかし後から使われない写真を送るよりはマシです。
お互いの構図やイメージのズレを解消させながら写真を撮影していくようにしましょう。
構図の指示はできるだけ具体的に!
レイヤーさん視点でしかわからないズレもあるもあると同時に、カメラマンの視点からでしかわからない修正ポイントもあります。そんな時はできる限り具体的に指示を出しましょう。
- 誰が(名前がわからなければキャラクター名でOK)
- どこに(前後、左右)
- どのくらい(体半分くらい、10cmくらい)
- どのように(近づく、離れる)
このようにできる限り、具体的に指示を与えます。また構図だけではなく、ウィッグや衣装の乱れなども合わせて教えてあげると良いでしょう。
撮影中に全体を見れるのはカメラマンだけなのです。的確でわかりやすい指示で作品作りに務めましょう。
ただしもちろん強い口調や特定の相手への集中的な指示出しは避けましょうね。
目印を見つける!設置する!
最初は構図の中心点がしっかり取れていたのに、動いたり、確認の間にズレてしまった。大人数の撮影ではよくあることです。そんな時にまた直すのに時間を取っていたら撮影枚数が減ってしまいます。
こんな時は事前に目印にできるものを見つけるか、設置しておきましょう。
- 例えば中心となる点から直線上に三脚、踏み台などを設置して目印にする。
- 床のタイルの線を見つけて、その位置を横並びの目印にする。
といった具合に、自分なりの目印を設置しておくとわかりやすいです。
レイヤーさんから見える位置に大きな鏡を置く!
もう一つ、これはテクニックというか気遣いに近いものですが、スタジオなどにある姿見などの大きい鏡を見える位置にセットしてあげると良いでしょう。撮影構図の確認や衣装の確認などに活用できます。
大型撮影の構図案と注意点!
大型撮影の構図はそこまでバリエーションが豊富にあるわけではありません。実際にTwitterやコスプレイヤーズアーカイブなどでどんな構図で撮られているかを参考にして、それに近い構図を撮るのが無難です。
ここではよく大型撮影で撮影される構図とその際の注意点を解説していきましょう。
横並び一列の構図
直線上に全てのメンバーが横並びに映る「大型で一番一般的な構図」です。最もシンプルながら最も使われやすい構図です。
注意ポイントは、メンバー同士の距離がある程度均一に保てているかです。特定のキャラとキャラの間隔だけが離れていると違和感があります。
撮られている側からは気付きにくいので、カメラマンの視点から指示を出す必要があります。また隅の方のキャラが写真からはみ出していないかも合わせて注意しましょう。
前後に分かれる構図
「メンバーの内の何人かが前に出て、座りもしくは立ち膝。後ろのメンバーそれより高い位置で並ぶ」という前後に分かれる構図です。
- 前後のメンバー構成に違和感が無いか。(主人公やセンターに近いキャラが後ろにいる)
- F値を絞りすぎて、後ろのメンバーの顔がボケていないか。
この辺りが注意したいポイントになります。
円になる、バラける構図の写真
全体で円になったり、いくつかのグループを作ってバラける構図の写真です。うまくいけばありきたりではない構図ですが、実際に撮ってみると難しいことも多いですね。
この場合はグループ間や円の中心に空間が空きやすいので、何かものを置いたり、衣装を広げるなど違和感なく埋める工夫が必要です。
横になってもらい、上から撮影する。
アイドル系の大型併せの写真等でよくある構図です。この場合は、なるべくギューッとくっついてもらい、頭の位置を具体的な指示で整えることが一番のポイントです。
横になった状態からは全体を確認することができませんので、ここは的確な指示を行う必要があります。
【初心者必見!】コスプレ大型併せ撮影の心構え!
最後にテクニック以上に大切な大型併せ撮影時の心構えをまとめておきましょう。
特に大型併せの撮影はほとんどの場合「初対面の相手が多く、緊張しやすいもの」です。
慣れていない初心者の場合ならなおさらですよね。そんな時にちょっと気が楽になる心構えを解説しましょう。
深呼吸して慎重に。最初の一枚撮ったら確認!
いよいよ自分が撮影する時に、初対面の相手ばかりではどうしても緊張してしまうもの。
ここは深呼吸して、最初の一枚をまず撮ってみましょう。そしたら落ち着いてまず自分で確認。直すべきところはないかを見て、相手にも確認してもらいましょう。
設定などを多少整えて、相手にも確認してもらいうまくいきそうだったら進める。この流れに従って、焦らず慎重に撮ることが大切です。
時間がかかりすぎてもいけませんが、ある程度の時間は十分相手も待ってくれますよ。
他のカメラマンと挨拶、協力、連携しよう!
大型併せではカメラマンが一人だけということはかなり少ないケースです。あなた以外にもカメラマンがいる場合がほとんどです。
「この人より良い写真を撮ってやる!」そんな気持ちもあるかもしれませんが、ここは協力して撮影を進めていくことを心がけましょう。
まずは「本日はよろしくお願いします。」と挨拶。初対面のレイヤーさんには話かけづらいかもしれませんが、カメラマン同士なら幾分か気が楽です。雑談などもしながら準備して、ちょっとでも緊張を紛らわせましょう。
また撮影中も自分だけが撮影するのではなく、相手の時間もしっかり作ってあげること。
また大型併せの後は必ずグループに分かれての撮影やピンを撮る時間があります。場所や役割分担をしながら撮影を進めるようにしましょう。
作品は必ず理解して撮影に臨む!
大型併せの撮影では、こちらも構図や配置などで意見を求められます。その際に作品を知らないと、合わないキャラクター同士を並べてしまったり、違和感のある構図を提案してしまう元になりかねません。
撮影前には実際のアニメを見ておく、ゲームをやっておく、SNSでアップされている写真を見ておく。時間が無ければキャラ紹介やプレイ動画を見るだけでも違います。
ある程度の作品の理解をして撮影に臨むと写真や提案する構図も説得力があるものになります。この辺りは大型併せに限らず、全てのコスプレ撮影で言えることかもしれませんね。
【まとめ】大型併せは経験を積むチャンス!
今回は大型併せの撮影について誰でも簡単に使える基本テクニックの解説でした。
たとえあなたが初心者であっても今回解説したポイントに気をつけて撮影すれば「失敗しない大型併せの写真」が撮影できます。
大型併せは冒頭に書いたように、あえて避けるカメラマンも少なくありません。しかし今まで交流が無い相手と知り合えたり、大型→グループ→ピンまでの撮影が経験できるまたとないチャンスでもあります。
ぜひとも積極的に参加して、今後のスキルアップに生かしていきましょう。
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